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数年前になりますが、あるお客様の七五三のご衣装が、
白地に小花の品の良い大人の小紋で出来ていました。
お話を伺うと、着物に造形の深かった、既に故人であられる義理のお母様が選ばれたとのことで、
自分の娘にもこんな装いをさせたいなあと、考えるようになりました。
時をほぼ同じくして、友人である山口さんが、仕事を仕立て一本に絞って始められ、
数々の大人中古の着物から、子供の着物に生まれ変わらせた作品をみせてもらいました。
そのオリジナリティ溢れる愛らしい着物にすっかり魅了され、
子供の七五三は彼女に依頼しようと考えて、それは私の夢になりました。
当時から、懇意にしていた立川の中古呉服屋さんの着楽堂さんの店主に依頼し、
私のイメージの着物を探していただきました。

帯は、本来は中幅帯ですが、帯幅は実際には二つ折りにすると、5 ミリほどの違いになるため、
敢えて大人の帯を三重にして羽根を沢山出して結びました。
反物で探すと、そこから裏地をつけねばなりませんが、すでに良い裏地が着いており、
そのままつかいました。
最大の懸念だった袖の長さも、仕上がったら、ちゃんと振袖になっていたのです。
身頃の布と、袖を入れ替えることによって、この長さを出したそうです。
同じ手法で、逆に長い袖の着物を使って身頃をはぐことなく丈を出すことも可能なのです。
小物類は全て新品で揃えても、6 万円くらいの総額でした。
このように、大人の着物から子供用に作り変えることは、着物の特性から言っても、昔から当たり前に行われていたことです。

でも、私と同じように考えて依頼しようとしても、他の呉服屋さんでは「今時こんなことしない」と、
けんもほろろに断られたなどという話を聞きました。
とても残念な話です。

昔は当たり前のことだったことが、今の時代にはとても贅沢になってしまうことは、着物の世界では多くあることです。
100 年あまり前には、日本中の人が着ていた正藍染が、とても今は希少価値が高く、高価になってしまうように。
そういう意味では、この着物はとても贅沢なのかもしれません。
今度は、下の娘に着せる予定です。彼女は小柄なので、中幅帯を探す予定で、これも楽しみです。

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