2017年5月5日黒無地の着物という考え方
最近はとりどりの美しい袴姿が、目を楽しませてくれますね。この間、こんな質問をされました。「喪服に、袴を合わせたいという人がいるけど、どう思う?」と。「決して悪くはないと思いますよ。卒業という、厳粛な式典の性質から考えても。」とお答えしたところ。「だけど、喪服だよねー」と、ピンとは、来てない様子。「宝塚は、黒に独特な緑の袴を着用しますね。喪服というより、五つ紋付きの黒無地の着物と考え方をするんですよ。」と答えながら、確かに無理もないことなのかもしれない。と思いました。黒無地は、深い深い色をしていますが、この黒は一度で染められるものではなく、紅を下染めにつかえば、暖かみのある黒に、藍をしたにすれば、冴え渡るような黒になります。光沢のある艶やかな羽二重、ちりめん地の場合は、光を抱き込んで動きに合わせて黒は深みを帯びる。黒地に、白に染め抜かれた五つの家紋。余計なものをそぎおとしたからこそ現れる究極な美がそこにはあるような気がします。弔事のみならず、帯を代え、慶事に用いられたこともあったでしょう。また、女学生の袴のいろはかつて学校によって違って居ました。日常に学校に通うときには、銘仙等を着用し、式典は紋付きを着用した。宝塚の袴姿は、本来の袴姿を今に変わらず伝えるもの。着物は、ゆるやかなれども、時代に応じて変化してきた。そのなかにおいても、変わらないものが、伝えてくれるもの。これが伝統の力といえるのかもしれません。