世界中の女性が集まる国際会議に聴衆者として参加したい とのことで、それに出席するために着物を誂えようかと考えていて。と、高校時代から付き合いのある親友から連絡があったのは、三月も終わりの頃のこと。日程が、5月12日とのことで、既に二ヶ月を切っておりまして、仕立てを一月と考えると、時間がない!というのが、正直な感想でした。京都の問屋につてがあったので、即連絡をし、要望を伝えると同時に、見つからなかった場合に備えて、私の手持ちからレンタルができるように、打ち合わせを進め、また、心当たりの呉服屋に見に行くこともしましたが、やはり、即座に飛び込みでいい着物を探すことは困難なことでもありました。

京都の問屋さんとは、入念な打ち合わせを繰り返し行い、お着物を用意していただきました。刺繍の専門問屋であるため、普段は小物等を一切置いていないのですが、私たちが来る日に合わせて取り揃えて頂いていました。私が、店を選ぶときに、基準にしたらいいと考えているのは、衣桁に掛かっている着物。私が店員なら、はっと目を引く、勝負の着物を掛けると彼女には話してありました。

京都のお店についたら、まずは、美味しいお茶が出てきて、数年ぶりにお会いした会長さんは、着物とは関係ない雑談から、ゆったりと話始めました。

でも、目の前の衣桁には、目を奪われるような、彼女にぴったりの、美しい着物が、かけてあったのです。羽織ると正に彼女の為の着物という気がしました。繊細な、山口美術織物の、フランス刺繍の帯に、小物も二セット、汚れ防止の雨コートも用意して、万全なお支度になりました。

沢山の人の手をかりて手元に来てくれる着物はまた、多くの人との豊かな関係を作ってくれる。仕上がってから一度本番前に、リハーサルをしたときには、お母様が一緒に我が家にお運びくださり、お二人で着物を着てくださいました。こんなに、嬉しいことはありません。また、本番では、多くの海外のかたとの交流に、この着物が力を貸してくれたことでしょう。大人の女性の美しさに、品格の備わった装い。このおしたくのお手伝いさせていただき、光栄で幸せなひとときでした。

今後も、彼女のよきパートナーとして、この着物が寄り添い素晴らしいときを共に紡いでくれることを願っています。

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