羽生くんが、国民栄誉賞を受けられて、本当に美しい紋付き袴の姿が拝見出来て、幸せです。

人間国宝の甲田氏から、精好仙台平を贈られたとのことです。立っても座っても、シワ一つなく、すっとした姿になるんですよね。本当に何て美しいのでしょーか!!

昔わかかりしころ、先代の甲田榮佑氏の、ある特集記事を読んで、それこそ雷に撃たれたかのような、感動をしたことを覚えています。戦後、次々と精好仙台平を作る人が、辞めていくなか、ただ一人技法を守り抜き、さらに改良を重ねていき、人間国宝にまでなった方の話。

私はこういう方のことを、私なりに学んで、次の世代の方にも伝えていきたい。と思って、本を買い集めたり、図書館で調べたり休日はあちこちの美術館、博物館を渡り歩くという、生活をしていたことがありました。当時は、呉服屋に勤めて、着付けの講師の資格をとり、給料を着物につぎ込み、休日は図書館か、博物館という、少々若い娘としては、心配な生活をしていたのです!いや、あり得ないね。本当に。書いていてまずい人だと自覚するかも。

うっかりと結婚してくれた主人のお陰で、暫く段ボールに数々の本を詰め込み。引っ越しを繰り返すうちに、存在すら忘れかかっていた頃。子育てにおわれて、着物着ている場合じゃないね!という日々を送っていたころ。

埼玉に住んでいた時に、広島の時の友人から連絡があり、ご夫婦でお茶をしたいので、中古の着物を探してくれないかといわれたのです。当時は、今ほどネット通販が盛んではなかったし、深くは考えずに引き受けたのですが。

青梅の着物の祭りに出店していた中古呉服屋さんと知り合いになり、立川に着物を見に行きました。男物をさがすほうが、難しく。お召しの次は袴という具合に、一つずつ探していきました。その店に、ひっそりと、ウコンの風呂敷に包まれて、幾つかの袴が入っていたのですが、そのうちの一つが、甲田榮佑氏の、仙台平でした。とんでもない宝に出会った!えらいものを見つけてしまった。と、半ばパニックになり、値札を見たら。これが、また驚きの価格で、思わず叫びました。「こんな値段つけちゃ、ダメですよ。あ、いや、いいです。買います。値上げしないでね。」とか、訳のわからないことを言いながら、抱えて持ち帰りました。4代に渡って着ることが出来る精好仙台平は、少なくとも当時の40年以上前に作られたもの。憧れてずっと触れてみたかったもの。その時に、私は着物を見つける異常なくらいの嗅覚があるのだと、自覚しました。暫く手元で、愛でた後、依頼していただいた方の元へと、袴は嫁に行きました。

着物の世界の凄さを初めて知るきっかけになり、再び、私を着物の世界に引き戻した。孤高で、ひたすら一つの道を突き進む男が纏うに相応しい惚れ惚れするような、美しい仙台平!

ずっと残っていってほしいと思います。