レンタルや、撮影など大きな仕事が控えているときは、特に事前打ち合わせが必要となってきます。私は近所であれば出来る限り事前打ち合わせをします。3年先ですが、とご連絡くださる場合もありますが、大歓迎です。3年も前から私に決めてくださるなんて、本当にありがたいですし、私もその時を楽しみに待ちながら過ごすことができるのです。時の経過を楽しみに待つのが、着物の醍醐味です。準備の過程を楽しむものなのです。また着物の姿は一度で完成するというよりも、時を重ねて共に成長していくものです。着物に託された思いを、お召になる方が受けとってくださって、着物姿はより輝いていきます。たとうしを広げ、肩に羽織れば、沢山のことを着物は教えてくれます。慈しんでくれた人のことを身近に感じていただける。悲しみの時に寄り添い、力づけ、喜びの時も常に共にある。

何でも安心して任せて世話をしてくださる方がおられるうちは、その方におまかせすれば間違いないのですが、そういった方が亡くなった時、ご連絡を下さる場合があります。急にどうしたらよいかわからなくなるようで、順にたとうしを広げていくと、変わらずにある思いがあります。生き様も価値観も。上手く伝えられないままであったことも、そこに変わらず残っているのです。受けとっていただくのに、大切になるのは、私自身の気配を消すことになります。着付けの仕事を自分の作品と捉えたことはありません。何故なら単純に、大切な人に着せたい人の代わりに着せているからです。

打ち合わせは、お互いにゆっくり向き合う大切な時間。これからも、大切にしていきたいと思います。