毎年成人式になると、色とりどりの振り袖姿が花のように美しく、楽しませてくれますが、私に依頼頂く方は、お母様の代から引き継いだ方々が、多いです。何となく、着物が呼んでくれているようなそんな感覚を覚えます。云わば、取説を無くしてしまったような場合の、町の電気やさんのようなものでしょうか。最新型ではないけれど、昔のパーツを揃えているような。実際、パーツが足りなくなっているような場合もありまして、引っ張り出して合わせるのですから、あながち遠い例えでもないのでしょう。さて、こちらのお振り袖は、日本有数の名家出身の、大おば様から、引き継がれた振り袖で、お嬢様で三代目。60年の時を経て、風格を備え、鴛鴦や、優しい草花模様が、品よく配されながらも、肩の朱は大胆で印象深いのです。この振り袖は少し短めに袖がなっていますが、袖を少しつめて、長くお召しになりたいほど、気に入っておられたため。やがて、姪のおば様がたに引き継がれて、お嬢様に渡された。着物は家族の物語を静かに秘めながら、眠り続けますが、誰かが、袖を通すと、その記憶を雄弁に語り始めるのかもしれません。そんな気がしてならないのです。

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