呉服屋サンにはいって最初に学んだのは、反物の巻き方と、たとうしのこよりの結びかたで。緩まないのに、解こうとすれば、ふわっと外れるこよりの結びかたは、美しく。お客様のところで、こよりのたとうしをみると、こっそりと嬉々として結び直して、よし!と言う気持ちになります。最近はバイヤス綿テープの紐なのがちょっと寂しい。そういえば、直虎(また!?その話題!?と言わないで。)のなかで、健康オタクの家康の薬箱の預かる小姓になった万福が、薬箱の紐の結びかたの違いに気付き、不審な人物を捉えて、結果知行1万石を賜ることになったシーンがでてきますが、あれは、よくわかります。結び方というのは、癖のようなものがあり、自分が着せたものでないものはすぐわかるんですよね。様々な紐の複雑な結びかたを見るにつけ、成る程、防犯の役割なんかもあったのかもしれないと思います。袴の紐一つとっても、なかなか複雑な扱いをしますので。それにしても、着付けは、一体何回結ぶことやら不明になってくるほど、結んでいきますが、子供の懐剣の、飾り紐なども、本当に美しい。7才のびらかん入れにも細かい紐による装飾があります。髪はかのこや、ちんころを結んで仕上げますし、結びと言う作業はずっと最初から最後まであるのです。会社では、伝統文化を継承するためにも、あえてたとうしに、綿ひもではなく、こよりをつけていたはずです。仕事を始めるにあたって最初に習ったこよりの結びに、大切な教えが含まれていた気がします。要の場所をおさえ、ながれるように結んでいき、緩まないのに、外すときはふわっと外れる。実用の中にも美が宿る。着付け師が、目指すところの結びなのです。