お客様のお着物を見させていただくときに、重要になるのは、たとう紙だったりします。

お誂え  ◯◯様という、呉服屋さんが書いたものとは別に小さなメモのようなものがかかれている場合があります。

誰々とお名前が書いてある場合があります。誰のために誂えたか判らなくならないようにですね。大体のかたが、誂えたかたがいらっしゃらなくなったため、困って連絡をくださるので、大きなヒントになるのです。

娘さんや、お嫁さんであったり、時にお孫さんである場合もあります。お嫁さんのお名前の書いてあるたとう紙を開くと、お姑様ご自身の着物よりも、上等な着物が続々と出てくる。なんてことがありまして、「お嫁さんのためにここまでしてくださる方はなかなかいないですよ。」と申し上げたところ。お嫁様は、早くに実母様を亡くしているとのことで。「それは、きっと実母様ができなかった分をして差し上げようとしたんでしょうね。実の娘さんができたかのように嬉しかったんじゃないですか?」と申し上げました。

「でも、義母は自分の着たものはあまり頓着しなくて、シミや汚れが残っているものもあって。」と見せて頂くと、ギクッと身につまされる思いがしまして。我が身より、人の世話を優先していると言えば聞こえがよいが、私の場合、我が身がちゃんとしていないのに、人の世話ばかり焼いているところがあるので、ちょっと勝手に1人反省していましたら。

「義母の着物については、落ちるかクリーニングやさんに相談します。」と、自分は着る当ての当分ないお義母様の着物を別にされたのです。何か嬉しそうに照れ笑いをしているお義母様の姿を見るようで。「うちのお嫁さん、素敵な人でしょう?」そんな声が聞こえてきたように思ったのです。

お孫さんのお似合いになられそうな着物まででてきました。その着物が好きだというお孫さんが、着物を着る日もそう遠くはないでしょう。今から楽しみです。