お着付けをご依頼頂くときに、なるべく細かく打ち合わせをして、進めていきますが、お嬢様の七五三のお写真をみて感激しました。はんなりとした優しいお色目の小紋着尺を七五三の御衣装に仕立ててありました。遠目に見ると七宝柄に見えます。近づいてみると、何かエキゾチックな柄を2つ組み合わせてありました。その見事な柄の着物をお作りになったのは、お子さまのひいおばあちゃんにあたられるかたで、それに合わせて組帯の小袋帯を選んでおられました。通常中幅帯を使いますが、たっぷりとした長さがある小袋帯は、華奢なお嬢様の体格にも無理なく合わせられ、しなやかで形も作りやすく、使いやすいのです。

さらに素晴らしいのは、13詣りの際に仕立てがえ、今は大人の小紋として、使えるようになっています。ご身長がそこから、伸びても仕立てがえがまたできるんですね。写真は下のお嬢様の七五三に合わせて、袋帯をしめていますが、なんとおばあ様は、お嬢様のお名前の百合の花をデザインした名古屋帯をご用意下さっていました。

無論下のお嬢様の御衣装も素晴らしく、七五三には、青いきっぱりとした色に、可憐な花が配されていて、帯は鱗模様。この帯の取り合わせが美しく、印象的。袋帯にはなるのですが、軽く柔らかい素材のため、お子さんには負担が少ないのです。「鱗模様は、厄よけの意味がありまして。」と申し上げたところ、おばあ様も同じことをおっしゃっていたとのことです。

この「厄よけ」という言葉が何かずっと頭にあって、お姉さまの着物の柄も、何か意味があるのではないかと考えていました。ふと。お姉さまの柄は、独鈷模様だろうかと考えました。博多帯に用いられる独鈷柄は、仏具をモチーフにした洗練され完成された献上柄であり、これも災いを打ち払う意味があります。

2つの独鈷を組み合わせ連続させていくと、7つの宝を文様化した七宝柄があらわれる。鱗模様にせよ、独鈷模様にせよ、厄を払うからには、紋様には強さがある。一方、茜染めは、浄血、増血作用があり、保温性も高いため、下着などにも古くから用いられてきた女性にゆかりの深い染め。厄を払う紋様の力強さに、茜染めの優しさが包み込んで、芯の部分に力強さを持ちながら、柔らかな印象を与えるのです。おばあ様の願いを見事に表現したお着物で、私はその深いお心に触れさせていただくと、暖かく幸せな気持ちになります。

下のお子さまも、小学校をご卒業され、青い着物は、仕立てがえられ、組帯を袴下帯にさせていただいて、お着付けをさせていただきました。今後、成人式や、13詣りのなど、及ばずながらも、何かお手伝いすることが出来たら幸いに思います。

姿は見えずとも、亡きおばあ様のお心はお子さまに引き継がれ、健やかなご成長をされることと存じます。影ながら、ご成長を見守らせていただけることが、着付け師の楽しみなのです。

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