15640910709401564091066700「来月会合があってね、以前おみせした更紗なら、季節感問わずに着れないかしら。」

というご質問を頂いたのは、1ヶ月程前のことで。

「文様の考え方は、その通りなんですが、季節的に、薄物になるんですよね。」

「ああ、そうなのね。」と、電話口のお声ががっかりしたように感じて。

「ちょっと待っていてください。からこの女将さんに聞いてみます。合う着物があるんじゃないかな。」

M様と、からこのおかみさんのお二人は、古いお付き合いがあり、20年振りにこれをきっかけにして、再会なさいました。着物を通じてお二人の人生が、時を経て交差した瞬間でした。

そして、まるで誂えたかのような、ぴったりとした夏物の作家さんの着物が用意されていました。夏物は、ハードルが高い難しい着物ですが、小物に至るまで、細心の注意を払って、用意されているのです。

素晴らしい着物姿が完成しました。

「レンタルであっても、じっくりお話しを聞いてその方を知ってからじゃないとお出しできないわ。」というのが、女将の口癖です。20年以上かけて集められたコレクションは、今では手に入らないものばかりになったそうです。

誂えのように、レンタルを楽しむ。自分の衣装部屋のように。着物の現代のあり方をここでも模索しながら考えて、提供し続けるプロの姿があります。