十八年如月号
「江戸言葉」
江戸っ子は、くどい喋りは野暮! 粋を求めてあっさりと言葉遊びに意地を張るのが信条である。話し言葉は、早く短くである。
江戸弁の特徴として、発音における簡略化がある。早くしゃべるために言い回しや発音を、より短くしていくのである。その一つが、母音の「ア・イ」が「エ~」に変化すること。例えば、「ありがたい」は「ありがてー」、「大根」は「でーこん」などである。「あたりめーだ べらぼうめ」が「あたぼうめ」みたいに言葉自体を縮めてしまう表現もある。「ていしゅ」は「ていし」「わかいじゅ」は「わかいし」「じゅく」は「じく」というように「しゅ」は「し」「じゅ」は「じ」となるのも早さを求める表現である。。また「殴る」を「ぶん殴る」「倒れる」を「ぶっ倒れる」「散らかす」を「おっ散らかす」など、動詞に接頭語を付け、より動詞を強調する表現が多いのも、粋でいなせな気質の表れといえる。粋と遊びを大事にする江戸っ子は、言葉遊びにも長けていた。ことわざや回文、比喩を日常的に用いて、その妙を競い合って楽しんだ。
「江戸っ子の生まれそこない金をため」「江戸っ子は五月の鯉の吹流し 口先ばかりではらわたはなし」などは、金に執着しないあっさりした性格をよく表している。
また「風呂から上がるのが早い」のを「烏の行水」、「行ったきり帰らない」のを「鉄砲玉」など言った。人を物や動物に例える比喩は、大いに流行した。
洒落がわからなければ江戸っ子にあらずという気風がり、語呂合わせの地口が大流行になった。「着た切雀」「湯屋転び寝起き」「御免な菜箸火吹きだけ」「杏より梅が安い」「甕に鰻が数々ござる」「9月朔日命が惜しし」「追風は帆に従え」等々。
又、惚れて一緒になった夫婦もやがては、男は「宿六」女は「山の神」になる。
宿六は「宿のろくでなし」の略である。上方者を「贅六」、酔っぱらいを「ずぶ六」、あるいは総領の甚六というように、六をつけて擬人化したよび方は卑しめる場合が多い。では「山の神」は「いろは歌」から「いろはにほへと・・・うゐのおくやまけふこえて」をみると、おく(奥様)が山のうえ(上―神)にいるとある。
ずっと旦那より神さんが上位という事であろうか。
これは江戸には女性が少ないことにもあるであろう。