今年の仕事は、こちらのスタジオを外しては、決して語ることはできません。理想とする仕事は、地元に根差して、貢献する形、また共に発展出来なければならない。その、チャンスを下さったオーナー様ご夫妻、並びに私たちを温かく迎えて下さったスタッフの皆様には、感謝の気持ちで一杯です。

昭和初期に建てられたという古民家のスタジオは、徐々に失われつつある、鎌倉の姿でもあります。親戚の家に遊びに来たようだと、リラックスした様子のお客様、回廊式になっている家屋を走りまわる可愛らしいお子さまの姿。こういう古い家屋の維持は、大変だと思うのですが、小さな力がよりあつまって古きよき鎌倉の姿が残っていくのではないかと思います。台風来る度に、実は自分の家以上に心配だったりします。多くの人に愛されるスタジオであって欲しい。そのお手伝いが少しでもできたら、幸いに思います。

責任をもち、慎重に粛々と人材の采配、育成を担ってくれたM氏、繁忙期の多くの仕事を担ってくれた、N氏。指導を担って下さったT先生。皆様、ポンコツリーダーについてきたことを後悔したのではないかと、つくづく思っておりますが。一人では成し遂げられないことばかりですので、何物にも替えがたいものは、人であるとおもいます。 来年も共に発展できたら、嬉しく思います。

 

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もう一度生きなおす力を着物は与えてくれるものだと最近思いますが、先日一緒にお仕事をさせていただいたアントロワさんも、調度そんなことをしておられるのかなと、思いました。医療用ウィッグを着用されるかたのための、美容室を営んでおられます。来年成人式の着付けを担当させていただく予定です。

昔、母が脳腫瘍の手術をしたとき、年は、45でした。私はその年を越えましたが、今末娘は、当時の私の年齢と同じ年になりまして、この状態で、大きな手術をするとしたら、どういった気持ちだったかと、考えます。

母の手術中のたまらない不安を、はっきりと覚えています。また、開頭手術後にパッと帽子を脱いで剃髪姿を見せた母のことも思い出します。びっくりしたあまり、食べかけのアイスを取り落としてしまったこと。明るく笑っていた母を思い出します。今考えるととんでもなく強い人だと思いますが、毛が生えるまで、帽子と、ウィッグを着用していました。髪の毛のことより、「何としてでも、生きて元の生活に戻る」と、考えていたそうで。逞しい人だと思います。

今ガンの手術も、長期の入院にならず、周囲に知られずに抗がん剤治療で、髪が抜け落ちたため、ウィッグを着用するかたが増えたといいます。事情を知られていないため、学校の保護者会などで、神経をすり減らすような場合もあるそうです。髪の毛の生えかたも、髪質もかわるため、一度作ったウィッグを何度もカットし直して、調整をしていくそうです。

「治療で髪の毛が抜けて、ショックを受けているところに、病院から、紹介されるのは、何十万もするウィッグで。何もご存知ないと、そういうものかと、買ってしまうかたも多いと思うんですが、決して質のよいものとも言い難くて。私がご紹介出来るのも、10万以上するもので、決して安くはないですが、髪の毛が生えてきたらメンテナンスを都度都度していきますから、周囲にも知られずにすむんですよね。」

でも、それもどれ程の不安があるかと思いますが、月一度のヘアのメンテナンスは、私は心のケアにつながっている気がします。人に触れる仕事というのは、お客様にも色々なことが伝わります。本当に驚くくらいに、伝わるものだと思います。安心してお任せ頂くことが、よい仕事に繋がっていくので、日々私たちも、健やかでありたいと考えています。

心技体合わせてよい仕事が出来るので。

安らぎに満ちたアントロワさんのひとときは、お客様にとってオアシスになっているのでしょう。

私たちも、ご縁を頂いたことに感謝して、

お客様によい1日をお過ごし頂けるように、お着付けをさせていただけたらとおもいます。

 

 

 

 

 

 

 

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