最近つくづく下積みの大切さを思います。着付け教室で、習って資格をとっても仕事にすぐなるわけではなく、下積みが必ず必要な世界だとおもいます。紐とり3年とはよくいったもので、しっかりとそこにいるいる人の動きをみて、学ぶもの。教えられるものではありません。なぜなら、お客様を前にして、指導をしたなら本当は失礼な話で。現場のトップもタイプ様々で、目の前で叱りつける人もいます。黙って脱がしてしまう人も。あるいは仕事を入れない、帰してしまうクライアントもいます。大変厳しい世界で、口利きがないと、入職出来ない場合も多いこの世界。

現場で本当に美しい着付けをして、人に慕われる先生が居ました。佇まいがそういう方は違うのですが、そういう方の元には、教えを乞いにやって来る方が沢山います。看板など、一切なくても。宣伝もしなくても、仕事の依頼は絶えず、それでいて謙虚で、思いやりに溢れている。その心が、仕事に現れている人です。

下積みや、仕事における下準備こそ、きちんとしなければならないと、そういう方は口を揃えておっしゃいます。下積みの仕事をしながら、徐々に覚えていく、10年やっても、20年やっても、新しいものに出会います。

一足とびに飛躍を目指さず、足場をしっかり固めて、そこから踏み出していかなければいけない。焦りや無理は禁物。そのことも、伝えていきたいと思います。

若い頃、よき先輩に会えて、目をかけていただき、教えて頂き、また巡りめぐって、共に仕事をしたり、再び教えを乞える幸せ。

私は人一倍不器用だからこそ、続いた。人より出来たらきっと、出来た気になって終わっていたことでしょう。今でも何も変わりません。歩みを止めず、前を見て進んで行きたいと思います。

 

 

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私が共に仕事をする着付け師さんたちの素晴らしさですが、難しい案件でも、難なくこなす機転、少々のトラブルを想定した装備品を備え、例え、困ったとしても、表に出さず時間通りに仕上げることです。場に相応しい装いになるかというのは、とても神経を払うもので、成人式を過ぎて落ち着いた年齢の振袖姿を違和感なく仕上げていきます。

これは、成人さんに相応しい着付けをするより、難しいものです。何よりそのことをお客様が気づいてくださり、感激してくださり、お礼の電話をくださったと伺うと、私はそういう経験値のたかい着付け師さんたちと仕事ができることを、とても誇りに思います。

取引先を増やして行くのは、経営にとっては、良いことに見えることもありましたが、私は何を提供してきたのか、何をお客様が求めてくださったのか、それを見失っては、元も子もない。シンプルにお客様と、私が向き合うだけなら、何も問題は起きません。間にクライアントが入り、人をいれ、こちらの提供できるものと、一致しないときに不具合が起きるのです。

そんなとき、やはり私は、真摯にお客様に向き合うことを大切に考えていきたい。広げた風呂敷を、小さくしても、元々は田舎のおかんの、小さな着付けやなんですから。

私が考える美しい着付けを追求していけば、よいのではないかと思います。

 

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