15640910709401564091066700「来月会合があってね、以前おみせした更紗なら、季節感問わずに着れないかしら。」

というご質問を頂いたのは、1ヶ月程前のことで。

「文様の考え方は、その通りなんですが、季節的に、薄物になるんですよね。」

「ああ、そうなのね。」と、電話口のお声ががっかりしたように感じて。

「ちょっと待っていてください。からこの女将さんに聞いてみます。合う着物があるんじゃないかな。」

M様と、からこのおかみさんのお二人は、古いお付き合いがあり、20年振りにこれをきっかけにして、再会なさいました。着物を通じてお二人の人生が、時を経て交差した瞬間でした。

そして、まるで誂えたかのような、ぴったりとした夏物の作家さんの着物が用意されていました。夏物は、ハードルが高い難しい着物ですが、小物に至るまで、細心の注意を払って、用意されているのです。

素晴らしい着物姿が完成しました。

「レンタルであっても、じっくりお話しを聞いてその方を知ってからじゃないとお出しできないわ。」というのが、女将の口癖です。20年以上かけて集められたコレクションは、今では手に入らないものばかりになったそうです。

誂えのように、レンタルを楽しむ。自分の衣装部屋のように。着物の現代のあり方をここでも模索しながら考えて、提供し続けるプロの姿があります。

 

 

 

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着付け師の大きな喜びは着物を通してお客様のお子さま、お孫様のご成長を共に喜ぶことができること。おばあさまが、揃えて下さった着物を、お孫さんたち4人の方が順に着たのだと伺うと、一枚の着物が繋げるご縁を思います。

夏休みの間に、七五三の御衣装をおばあ様と見に行くのだと伺うと、きっと豊かな時を紡いでいかれるのだろうと私も楽しみな気持ちになります。

20数年の時を経て、お母様のお着物をお召しになられるお支度のお手伝いもよくあります。ふと着物から立ち上がる尊い家族の記憶。深い愛情。沢山の喜びを与えてくれる子供たちの存在。日常の中に埋没しそうな感情を沢山呼び覚ましてくれる時です。

私のお客様は、ある意味現代において、稀有な方が多いかもしれません。なんとなく、着物が呼んでくれた感覚を覚えます。

神様の子、尊い存在として、小さな命を守り抜く。現代のように育っていくのが当たり前な時代は、歴史上は、極わずかな時間。

平和な時を謳歌出来るのは、長い縦軸の極限られた時、だからこそ、平穏な今日という佳き日を未来へと繋いでいきたい。有限であるからこそ、触れ合う人が、いとおしい。

長いこと仕事をしてきて、スキルにゆとりが生まれ、不測の事態を回避できるようになって、新たなサービスも産み出していくことになりました。同時に、人を育て、賛同して下さる企業様との連携が必要になりました。

原点は、「愛する人たちの為に、懸命に生きる人たちのお手伝いをする。」です。常に原点を忘れず、私自身も心身ともに健やかであることを大切にして、やっていきたいと思います。

 

 

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